― 半導体と哲学の交差点:序章 ―
半導体。
スマートフォン、電気自動車、AI、医療機器、宇宙探査。
そのどれにも、この小さなチップが深く関わっています。
けれど──その中身がどう動き、どう作られているのか、実はよく知られていません。
私自身、詳しく知っているわけではありませんでした。
けれどある時、ふと思ったのです。
「これは、ただの技術の話じゃない。
“人間がここまでやった”という、ものづくりの思想の話なのかもしれない。」
このシリーズは、そんな一人の技術好きが、
半導体という世界を“もう少し深く”知ろうとする旅の記録です。
うまく説明できないところもあるかもしれません。
でも、なるべく正確に、そして何より“面白く”伝えられるように、
自分の言葉で、一歩ずつ書いていきたいと思っています。
なぜ「哲学」として半導体を語るのか?
技術というものの中には、人間の思想や問いが宿っている。 そう感じるようになったのは、コンピュータ誕生の裏側を描いた『チューリングの大聖堂』という本に出会ったからかもしれません。 そこでは、コンピュータの誕生が、単なる技術革新としてではなく「思想の具現化」としてのドラマが描かれていたのです。
半導体の真の魅力とは、ただプロセスノードが小さいとか集積度が高いとかいう数字ではありません。
その根底には、「いかに作るか」という設計思想と、「なぜそう作るか」という深い問いが潜んでいる。
素材、設計、加工、接続──その一つひとつに、
「こうありたい」「もっと良くしたい」という人間の意志がある。
それを私は、“哲学”と呼んでみたいと思ったのです。
それは、派手な思想や哲学者の名言ではなく、
“黙って積み上げられた思索”であり、
“職人が語らずに示した美学”でもあります。
どんな人に届けたいか
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技術が好きな人
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半導体に興味はあるがとっつきにくいと思っていた人
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複雑な技術をもっと“人の視点”で見てみたい人
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何かを「作る」ことの意味を、改めて考えてみたい人
このシリーズの進め方
このシリーズでは、以下のようなテーマ(仮)を追いながら、
半導体の構造、工程、思想、応用、そして未来について、
できるだけ丁寧に、そして柔らかく語っていきます。
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第1章:素材から始まる哲学(シリコン)
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第2章:知性を描く魔術(前工程)
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第3章:接続する思想(後工程)
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第4章:論理の設計(回路と思想)
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第5章:応用される知性(CMOSセンサー・推論チップ)
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第6章:半導体と世界(地政学・覇権・日本の挑戦)
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第7章:AI時代の設計という営み
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終章:ナノ技術の先に見えるもの
あなたへの問い:
技術はただの手段ではありません。 その裏には、必ず”作り手の問い”や”選択の美学”があります。
あなたが今使っている技術に、どんな哲学が宿っていると思いますか?
次回:
👉 第1章 第1節「導体・絶縁体・半導体の違いと、“中間”に宿る力」へつづく
あとがき
これは、まだまだ途中の試みです。
私は専門家ではないけれど、「自分で調べ、考え、語る」ことの楽しさを大切にしながら、
一歩ずつ進んでいけたらと思います。